◆ このページのポイント ◆

1.有害物質を含む汚染水を一滴も漏さないことが「埋立地の命」。

2.先進的な事例、先進技術の導入がされておらず、遮水構造が脆弱。

3.メーカー保証10年の遮水シートの耐久性を市は「半永久」としている。

4.水を通しにくい粘土状の土の層の導入が必須。


その遮水、最高水準?

埋立地が太田川の上流にできる計画ということで、不安なのは飲み水・農業用水が汚染されないか、という点です。

有害物質を含む焼却灰・ごみに降り注いだ雨は、ごみの間を浸透していくうちに有害物質を多く含んだ汚染水になります。

その汚染水が地下や川に直接流れ込まないように、

埋立地の外に汚染水を一滴も漏らさないように講じられているのが遮水構造です。


埋立期間として予定されている30年間はもちろん、50年、100年と、

汚染水がそのまま環境に流してもいいレベルの水質になるまでの間、汚染水を漏らさないでいられる遮水構造。

いわば「埋立地の命」と言えるものですが、広島市ではどのように設計されているのか。

その計画をみていきます。


「先進的」で「最新技術の導入を図」った遮水構造

ひとつ前のページ、〔?1〕不安すぎる工事計画にて、計画の前提として

“他都市における先進的な事例を参考にし“、”最新技術の導入を図る”

と建設合意書に書かれていることを紹介しました。

 

そこでまず、他県の最終処分場と、今回計画されている恵下(えげ)埋立地での

遮水対策システムを下図で比較してみます。


 (参考 チラシNo.43

 

赤字・赤枠で表示しているのが恵下(えげ)埋立地の底面の遮水構造です(斜面部分は別)。

 

左の「計画当初案」は、例の“他都市における先進的な事例を参考にし”“最新技術の導入を図る”としていた

建設合意書(2011年)を受けて、広島市が設計した案です。

地盤の上に1枚目の遮水シートを敷き、その上に水漏れを感知するセンサーを入れ、2枚目の遮水シートを。

遮水シートは保護土で守られ、その上にごみを埋め立てる計画でした。

 

 

左から2番めが、住民からの強い要望を受けて見直した現在の計画です。

 

それでも、一目瞭然の通り、恵下では埋立期間を30年という、全国基準をはるかに上回る長期間を定めていながら

遮水対策は明らかに脆弱なものとなっています

遮水シートってどんなもの?

遮水シートは厚さ1.5mmのポリエチレン製です。

全国のどの処分場でも扱われていますが、その枚数や他の遮水材料との併用など、

使用状況は各地域で違います。

 

遮水シートそのものは安価で手軽に施工できるので利用されているようです。

しかし施工時に、地面の凹凸・突起物・重機などによって破れることや、

つなぎあわせて使用するため施工不良による漏水のリスク

(恵下埋立地の規模ではシートとシートの接合部は約60kmにわたると推測されます)、

斜面では斜めの力が働くことによってより破れやすいなど、大きな弱点があります。(参考 チラシNo.1No.3No.35

 

 

2013年4月、「福島第一原発で汚染水120トン漏れる」というニュースが報道されましたが、

この時の東京新聞の記事には

「遮水シートが破れやすいのも、継ぎ目部分が弱いのも、ごみ処理の世界では基本知識と言っていい」

とまで記述されており、遮水シートだけに漏水防止機能を求めることは不可能であることがわかります。(チラシNo.11

 

と こ ろ が 広島市はこの遮水シートは「半永久」に遮水効果があるものと評価しています。

日本遮水工協会によると「自主規格」の解説書にこのように記述しています。

“耐久性について 

耐久性は遮水シートにとって、最も重要な項目です。

最終処分場の埋め立て期間は、概ね5~15年と設計されていることから、遮水シートの耐久性も15年を目安とする考え方が一般的なものとなってきています。さらに、隣地住民からは、子供、孫の代にまでの安全性を確保したいとして、期待寿命は50年以上にまで高まってきました。そこで、基準化にあたっては、遮水シートの材質については、15年を目安として、各項目の評価条件及び判定基準を設定しました”

(チラシNo.35

 

 

 

 

 

また、平成21年・23年の

環境影響評価審査会においては、

各委員よりこのように指摘をされています。(チラシNo.9

遮水構造 さらなる安全性を求めて

前述の通り、遮水シートだけでは漏水を防げないことから、専門家からは性格の違うものを重ねることによって漏水効果を高める方法が推奨されています。

 

その有効策のひとつとして一番効果があるとされている“ベントナイト混合土”は、劣化しにくく、非常に水を通しにくい粘土状の土です。

 

他県の最終処分場や、福島の汚染水を閉じ込めるためにも使用されており、使用が義務化されている国もあります。



このベントナイト混合土層は、計画当初においては採用されておらず、住民が根強く要望したところ

「遮水構造の安全性は、他の先進的な施設と同じレベルと思っていたが、より安全を確保することが重要だと考え

(平成24年9月21日市議会本会議にて広島市答弁)」、採用されるに至りました。(チラシNo.5

しかし、このベントナイト混合土層は採用されたものの、なぜか底面部だけの採用となっています。

この他にも、他県で施行されている自己修復シートも要望し、現在はそちらも採用となりましたが、

自己修復シートは底面部にはなく、斜面部のみとなっています。

市によると

「埋立地内部の水(浸出水)は、速やかに排水するので、溜まらないため問題ない」、または

「恵下埋立地のような勾配のきつい斜面ではベントナイト混合土は施工できない」と説明しています。

 


国立環境研究所の調査では、どんなに努力しても埋立地内に水が溜まったままになってしまう恐れがあると述べています。

全国の事例から、シートには穴が開くものと考えざるを得ません。水が溜まっていればその水は斜面からも流れ出します。

(遮水シートの破損例→チラシNo.3No.4

豪雨時には、緊急避難的に埋め立て地内部に雨水を溜めることが想定されています。

このようなことからも、斜面にもベントナイト混合土層は必要です。

(山梨県の「明野処分場」では斜面に穴が開き漏水が発生したことから搬入ストップとなったことがあるそうです) (チラシNo.23

 

また、昔は急斜面での施工は難しかったようですが、現在の技術では可能です。

複数のゼネコンに問い合わせたところ、全く問題なく急斜面に施工できる方法があり、広島市から依頼があれば詳細な検討を行う

回答があったとのことです。(チラシNo.17 「吹付工法」「ベントスロープ工法」「袋詰ベントナイト遮水層など)

 

これこそ最新技術の導入にあたるのではないでしょうか。

なぜ恵下の漏水対策はこの程度どまりなのか、市の甘い認識に不安が募ります。


また、このベントナイト斜面施工については、他にも物議をかもす協議経過があります。

 

ベントナイト混合土の採用について、平成24年5月10日に広島市(代表者広島市)と水内地区町内会連合会・会長との間で取り交わされた覚書には、“設計の 「安全性及び妥当性」を外部有識者に確認する”と記述されており、

どのような内容で外部有識者に確認し、その人がどう答えたのか情報公開を求めたところ、

下に示す通り回答は全て黒塗りでした。

設計に重大な影響を与える外部有識者の名前も、確認事項も、なぜか秘密になっているのです。(チラシNo.18

 

この他にも、

遮水に効果があるとして、

透水層、鉛直遮水工、セメントミルク注入などもありますが

左図にもあるように、万能のものではないようです。

遮水効果はあまり期待できません。(チラシNo.3

福島第一原発の汚染水地下貯水槽では、遮水シート2枚とベントナイトシートの三重構造をとっていたところ

汚染水1200トンが漏出してしまいました。(チラシNo.11裏

(※ベントナイトをシートにした遮水材がベントナイトシートで、ベントナイト混合土層とは別の遮水方法となります。)


シートだけの遮水は不十分であり、土質系のベントナイト混合土を加えたより安全性の高い構造にするよう

“考える会”は根気強く要望を続けていますが、市はいまだ計画を見直しません。

安全性よりも何を優先しようとしているのでしょう??

 

別のページで詳しく述べますが、恵下埋立地に放射性物質を含んだごみが持ち込まれる可能性も

将来的に全くゼロではありません。

 

このようなこともしっかり念頭に置いて、30年・50年・100年後も

市が言うように「一滴も漏らさない」施設とするために厳重に対策するべきです。

「遮水シートが破損した場合には、破損したシートの早期修復を行います」

でも…そうは言っても遮水シートは破れるに違いありません。

そのほかの不安・全国の事例」のページには全国の埋立地で遮水シートが破損した例を画像とともに挙げています。


市も、さすがに遮水シートが破損した場合のことを想定しています。

以下に「恵下埋立地環境影響評価書 要約書その2」の記述を転載します。



◆ 遮水管理システム
二重遮水シートの中には,破損した位置を速やかに発見する遮水管理システムを設置し,

万一シートが破損した場合でも,破損したシートの早期修復を行います。
これは,遮水シートが絶縁体であることを利用し,遮水シートの上下にあらかじめ電極を設置し,
万一遮水シートが破損した場合,その部分が通電することで破損位置を発見するものです。
また,下図に示すとおり,上下二枚の遮水シートどちらの破損も確認できるよう,遮水管理システムは

二重の遮水シートの間に測定用電極(センサー)を設置し,一層目の上と二層目の下にそれぞれ
給電用電極を設置する計画としています。(p.18より転載)


◆ 遮水シートの修復方法等
万一,遮水シートが破損した場合には,破損したシートの早期修復を行います。
遮水シートの修復方法は,次の図に示すように,埋立ての進捗状況(埋立層が浅い場合と埋立層が深い場合)等に

適した対応を行います。(文章・下図ともにp.19より転載)

そのほかの不安・全国の事例」のページに詳しく書いていますが、

山梨県の明野処分場ではたった4年間の間に遮水シートが二度破損、遮水管理システム自体にもトラブル(誤作動)が二度起きて

埋立地自体を閉鎖する事態になっています。


恵下埋立地でも、計算通り、目論見通り、

センサーがきちっと作動して遮水シートの破損個所をピンポイントで検知して

他に不具合を起こすことなくそこだけを的確に正確に修復できればいいんですけど。。。。。。。。。


人がやることだし、埋立期間30年(延長されると50~60年…100年という見立てもあり)、

その後浸出水の水質が安定して閉鎖されるまで…いったい何年間この遮水シート・遮水管理システムが計算通り作動してくれるでしょう。


それに、万一閉鎖されてからも、ここに有害ごみが埋まっていることは未来永劫変わらず、

土砂災害や地震などで埋め立てたごみが少しでも動けばまたそこから新たな有害物質が溶け出すのです。

埋立が終了したら安心、閉鎖されたら埋め立てたことはなかったことに~♪ということには残念ながらなりません。


私たち市民は、今、いったいどうしたらいいんでしょう?