◆ このページのポイント ◆

1.化学物質・環境ホルモンなど有害物質を濃縮したごみの埋立地が新しくつくられる計画。

2.それが、広島・東広島・呉・島しょ部の飲み水になる太田川の源流域に。

3.H32からごみ搬入予定でH28に着工予定。30年以上埋め立てられる見通し。

4.汚染水が地下や川に流れ込まないよう安全策の徹底が望まれるが、計画がずさん。


恵下(えげ)埋立地事業って?

広島市が進めている、ごみの最終処分場建設計画です。


場所は、佐伯区湯来町の水内(みのち)地区

太田川の源流の一つ、水内川の水源である山の上につくられる計画です。

 

平成32年より搬入開始予定とされています。 

 

 

広島市で発生する一般廃棄物を一手に引き受ける施設で、

可燃ごみの焼却灰、家庭から出る不燃ごみと事業系不燃ごみ、災害ごみなどが埋め立てられます。(下図参照)

 

現在広島市には、安佐北区安佐町筒瀬に「玖谷(くだに)埋立地」があり、

そこに最終処分の必要なごみが埋められています。

 

平成2年から埋立が始まった埋立地で、

容量はまだ残っているものの、焼却灰を埋める「灰区」とその他のごみを埋める「一般区」があり、

市の説明では「灰区がいっぱいになる」とのことで平成31年度末に埋め立てを終了するようです。

広島市HP>>玖谷埋立地 埋立地のしくみ

 

 

恵下埋立地については、

玖谷埋立地の使用期限の平成31年(2019年)までに工事を完了したい、として

広島市は平成28年4月に埋立地本体の工事着工を予定しています。

広島市HP>>手続き実施中の事業:恵下埋立地(仮称)整備事業

 

(2016.4.28追加)

広島市では市ホームページ内において、新たに恵下埋立地専門ページを作成されたそうです。

併せてお知らせいたします。

広島市HP>>恵下埋立地(仮称)

埋め立てられるごみ

恵下埋立地には、以下のごみが埋められる計画です。

(広島市 恵下埋立計画環境影響評価書 要約書 (その1)より転載)

 

見ての通り、陶磁器片のようなものだけでなく、

電化製品やビニール・プラスチックのような化学物質が埋め立てられます。

また、家庭から出たものだけでなく、事業系のごみもです。

広島市HP>>事業系一般廃棄物の減量・リサイクルガイドライン

 

加えて、ごみ焼却施設で発生する焼却灰・飛灰溶融スラグも埋め立てられます。

 

 

●飛灰(ひばい)…

ごみなどを燃やして処理する時に発生する灰のうち、排ガス出口の集塵装置で集めたばいじんと、ボイラーなどに付いて払い落とされたばいじんの総称。焼却炉の底などから排出される主灰、いわゆる焼却灰と区別してこう呼ぶ。飛灰の発生量はごみ全量の約3%だが、主灰に比べてダイオキシン類を多く含み、焼却施設から発生するダイオキシン類の約9割が飛灰に由来するという報告もある。また、鉛や亜鉛、カドミウムなどの重金属なども多く含む。さらに、ごみを高温で熱分解する溶融炉からは溶融飛灰が発生する。

緑のgoo 「飛灰とは」より転載)

 

●溶融スラグ(ようゆうスラグ)…

廃棄物溶融スラグとも呼ばれ、廃棄物下水汚泥焼却灰等を1300℃以上の高温で溶融したものを冷却し、固化させたものである。近年では建設土木資材としての積極的な活用が進められている。

溶融・固化することにより容積が減少し、最終処分場の延命を図ることができる他、高熱でダイオキシンや揮発性の重金属が無害化されるというメリットがある。

Wikipedia 「溶融スラグ」より転載)

 

 

上の図では不燃ごみが先に書かれていますが、埋立ごみの割合でみると焼却灰・飛灰が6割、不燃ごみが4割程度です。

焼却灰は可燃ごみを燃やした残りの灰で、体積が1/10程度になり、有害物質も濃縮された形で存在します

安佐南工場(ごみ焼却場)などで、今後、不燃ごみとされていたプラスチック系ごみの焼却も本格化する見通しなので、
焼却灰の比重は高く、有害性も高くなっていくものと思われます

 

また、溶融スラグについて、中工場(中区吉島)の灰溶融施設(溶融スラグをつくる工場)は

2011年に爆発事故を起こし廃止されたので、「溶融スラグ」として計上されている分も焼却灰・飛灰として処分されるので、

焼却灰の割合は上の図以上に高くなるでしょう。

 

粒子が細かく水に溶けやすい、有害物質を多く含む灰が多く埋め立てられる施設、ということになります。

 

 

ところが、地元の水内(みのち)地区に対して2012年時点では

「家庭等から排出される不燃ごみの新しい埋立地として整備」と案内があったそうです。

正しくはごみを焼却した後に残る焼却灰と飛灰が6割以上、

不燃ごみは4割程度の計画で、不燃ごみだけの埋立地ではありません。

 

また、「家庭等から排出される」とありますが、

家庭ゴミよりも事務所や工場などで発生する事業ゴミの方がはるかに多いので、

「事業所や家庭等から排出される」という表現の方が相応しいと言えます。

埋立期間

恵下埋立地の埋立容量は160万㎥、

埋立期間は平成32(2020)~62(2050)年の30年間と計画されています。

 

容量160万㎥の内訳は、ごみと覆土 年間合計4.7万㎥×30年間分と

被災ゴミなどの緊急搬入ゴミ。

埋め立て容量が160万㎥というのは、全国的にも大規模な埋立地です。

 

そして、国が制定した「廃棄物最終処分場の性能に関する指針」において、埋立期間は

「十五年程度を目安とし、これにより難い特別な事情がある場合には、必要かつ合理的な年数とする」と規定されており、

全国の多くの埋立地が期間を15年としています。

(参考 チラシNo.11

 

こう考えると30年間は異常に長いのですが、

しかし、市と水内(みのち)地区で交わされた建設合意書には更に延長する可能性があることも明記されています。

 

工事の内容、工事の区域

恵下埋立地は、

 

①埋立地本体(湯来町水内地区)

②広島湯来線から埋立地本体をむすぶ取付道路(湯来町水内地区)

③広島湯来線(安佐南区沼田町戸山~湯来町麦谷)の拡幅・トンネル新設

 

がセットになっています。(地図は後日掲載します)

 

なお、③の広島湯来線は、

平成25年12月の市の説明会(戸山公民館にて)では、埋立地とは別の公共事業であるとの説明でしたが

先月11月19日の説明会では埋立地とセットの事業であるような説明がありました。

実際に、市と水内地区連合町内会の建設了解確認の際、「悲願だった広島湯来線の整備とセットで」との文言が入っています。

(チラシNo.21

 

 

現在のところ、

①埋立地本体

     …77%の用地取得済み。平成28年春の着工を目指して用地取得・業者入札の開札(12月21日)が行われる

②取付道路

     …平成27年度末で工事終了見込み

③広島湯来線

     …戸山側から拡幅工事が開始。戸山カンツリークラブの少し上から始まるトンネル工事は、戸山住民の反発があり

       用地取得・工事開始に至っていない。

       湯来側の取付道路から麦谷に至る区間は、この道路工事が水内地区の「悲願だった」との文言とは裏腹に

       用地取得が進んでおらず、全く工事がされていない

 

という状況です。

 

知れば知るほど…矛盾、問題だらけの計画

広島市が合意の拠り所とする「建設合意書」には

“他都市における先進的な事例を参考にし“、”最新技術の導入を図る”と表記されており、

まさに最高水準の埋立地にすることが伺える記述となっています。

 

また、恵下埋立地建設に先駆けて作成された「環境影響評価準備書」においては

“本事業では、長期間に渡って構造物の安全が確保される必要があることから、

今後の事業計画の進捗に応じて、現在の技術基準等に沿った計画にとどまらず、

近年の降雨特性等を十分に考慮した降雨対策、大規模な斜面崩壊の対策及び土石流災害の対策を検討し、

必要な措置を講じた計画とすること。”

と広島市長自らの意見が述べられています。

 

恵下埋立地予定地は自然環境豊かな太田川の上流に位置します。

太田川は広島市民の飲み水や農業用水になる大切な水源です。

その源流の山の中に長期間にわたって有害物質を多く含むごみが搬入され、

搬入が終わった後も、ごみの中の有害物質は未来永劫残り続けるのです。


人が暮らしていくうえで、市民生活にとってごみの埋立地は必ず必要な施設と言えますが、

暮らしや健康を支える飲み水・農業用水が安全であり続けることが

広島市に暮らす私たちと将来ここに暮らす人たちにとって最優先であるはずです。

太田川の源流の山の上にできるものであるものであればなおさら、

30年、50年、100年、もっと長い期間安全が担保できるものでなければならないことは自明の理です。 


しかし、この事業について詳しく知ると、期待とは全く反対方向の計画となっていることが分かってきてしまうのです

 

 

 

この事業計画は既に最終案を迎えている状態ですが、

そもそも一部の人たちだけで計画が進められていた点、

立地条件、設計案に疑問が多い点で

とてもこのまま建設を容認できるものではありません

 

以下のページより、カテゴリーごとに問題点をご紹介します。