◆ このページのポイント ◆

1.埋立地から出る浸出水は環境ホルモンなど有害物質を含む。

2.この浸出水が川などに流れ込むと食物連鎖で濃縮されたり複合汚染が起こる可能性がある。

3.市は浸出水・処理水の環境ホルモン濃度を調べないし問題視していない。

4.浸出水を「高級処理」をしても塩分・有害物質は残り、危険な「汚染水」に変わりない。


ごみ処分場では、有害物質を含んだ汚水が発生します。

恵下(えげ)埋立地には、ごみに含まれる様々な有害物質が運び込まれます。

今までなかったところに、有害物質のかたまりができるのと同じことです。


そして、埋立地も、浸出水の放流管も、“遮水構造が万全”ではありません。

常に、漏水の危険性があります


有害物質が溶け出した汚染水(浸出水)が漏れると、

地下にしみこみ、地下水に混入したり、河川に流れ出たりして環境を破壊することにつながります。

埋立地本体で漏れる、送水ルートのどこかの地点で漏れる・・・あらゆる箇所において漏出の可能性があり、

それぞれの箇所から広がってゆく汚染の全貌は、誰にも予測できないでしょう。そして、誰にも止められません。

 

(チラシNo.28

土砂を埋めただけなら、自然災害に遭っても復旧は可能です。

けれども浸出水や有害物質を含む土砂が流出したら、その有害物質をきれいに取り除くことはできず、もはや元通りにはできません。

自然災害によるものだとしても、自然界にないものを人工的に埋めた時点で人災であり、

人災というものは少しの配慮でも確率を低くできるものです。

福島の原発事故でも、「あの時に、あの対策をとっていたらもっと被害を抑えることができたのに、、、」という事例はたくさんありました。

 

恵下の地下水は、湯来町側にも沼田側(戸山)にも流れていると思われます。

しかしその水みち(みずみち)の全貌はわかっていません。

(原発事故のあった福島では、海側から会津方面に向かって流れる地下水のあることがわかっているそうです)

 いったん漏れ出した有害物質は、どこに流れ、どこで影響をもたらすのかわかりません。


広島市民の飲み水・太田川が汚染されるのも心配なことですが、

自然に囲まれ、市民に憩いと豊かな農産物を提供してくれる湯来・戸山(市の農業推進地区に指定されているそうです)の

水が汚染されたら…。

それは、食べ物の安全にもかかわってくる問題に直結しますね。

浸出水に含まれる有害物質。そして、塩分。

※40年間廃棄物の研究をされている第一線の理学博士、貴田晶子氏にアドバイスいただき、

 このページの内容について若干順番を変更・加筆させていただきました。(2016.5月)

 

<貴田晶子博士聞き取りより 2016.3月>

 上記の表は、環境影響評価書にて記載されている、恵下埋立地の浸出水の想定です。

 2015.11月の説明会より「浸出水の浄水を高級処理方式に変更」(下部に配布資料画像あり)となったので、

上記の表とはまた水質が変わる見込みですが、ここで注目すべきは塩分です。

 

浄水処理では塩分濃度は全く変わりません

この塩分濃度は食品残さ(廃棄された食品にふくまれる調味料・塩分)や焼却されたプラスチックに由来するものだそうです。

高級処理に変更されたのちも、塩分除去は行わない(広島市説明会/質疑応答の際に聞き取り)そうです。

この塩分が淡水域に影響を及ぼすと、生態系を壊したり、農作物の黄変被害などの実例があるそうです。

貴田先生によると、有害物質の及ぼすリスクよりもはるかに塩分リスクの方が高い、とのことです。

これらの塩分は細かく・水に溶けこみやすい状態になっている「焼却後の灰」に多く含まれており、

灰はやみくもに埋め立てるのではなく、区画分けをするなど厳重管理が必要である、とおっしゃっていました。

(恵下埋立地から発生する塩分は最大に達すると42トン/日という試算もでています)

 

他に、貯水池に貯める過程で 浸出水に含まれるカルシウム成分が空気と混ざり合うと

カルシウムスケールを形成し送水管に付着・固化しやすく、管の閉塞を起こすリスクがある。

いずれは管を交換する=メンテナンスができる状態にしておく必要がある、とのことでした。

 

 

<聞き取り 以上>

恵下埋立地は高低差があるだけでなく、道路下に埋め込み、交換を前提としない設計なので、とても不安ですね。。

 

ごみ埋立地の浸出水には、環境ホルモン(外因性内分泌かく乱化学物質)と呼ばれているものが存在しています。

環境ホルモンには、ダイオキシン類PCB、樹脂の原料などに用いられるビスフェノールA、プラスチック可塑剤として使われているフタル酸エステル類などがあります。

環境省では、その疑いのあるものとして65種類の物質を位置づけ、研究しています。

環境ホルモンについてはいまだ実態が十分解明されていないものも多く、

過去に安全であるといわれていて重大な問題を引き起こした非加熱製剤やアスベスト(石綿)同様

もしかしたら非常に危険なものであるかもしれません。

 

その一つが「ビスフェノールA」と呼ばれるものです。

この物質は、厚生労働省のホームページに

「近年、動物の退治や産仔に対し、これまでの毒性試験では有害な影響が認められなかった量より、極めて低い容量の投与により影響が認められたことが報告されたことから、妊娠されている方(これらの方の胎児)や乳幼児がこの物質を摂取すると影響があるのではないかという懸念が持たれています」

と記述されています。

このような物質が漏れ出すと、河川内の食物連鎖によって濃縮されることや、いくつかの物質が複合して取り込まれること(複合汚染)で、人体に重大な影響を引き起こすかもしれません。

したがって、漏れだす量が少ないなら大した問題ではない、というわけではありません。

水と混ざって薄まってしまえばいい、というものでもありません。(チラシNo.7

有害物質の心配はいつまで?

長期間にわたってごみが搬入され、搬入が終わった後も、ごみの中の有害物質は未来永劫残り続けます

いずれは土壌が安定し、浸出水の有害物質=環境への影響が出なくなっていく、という話もあります。

しかし、 土壌が安定するまで数百年、いや不可能かもしれない、という見解もあります。

(土壌の安定=埋め立てたごみが動かない状態が続くということ)

 

市は 浸出水をずっとモニタリングし管理を行っていく、としていますが、きちんと検出されるとは限りません

どのような機器にも検出できる数値に限界があり、それ以下の量だと検出されないからです

つまり、有害物質がほんの微量混ざっていたとしても、検出されず、混ざってい「ない」と判断される可能性があるのです。

また、恵下埋立地周辺は地下水が豊富な土地です。

大量の地下水と混ざってしまえば有害物質は薄まるので、なおさら検出されにくくなります

薄まれば検出されないことを逆手にとると、ずさんな検査を行われる可能性も懸念されます

 

なお、埋立終了後、浸出水の水質が2年続けて基準以下という検出結果が出ると、埋立地は廃止となり、

その後はモニタリングをはじめ、配管のメンテナンスなど管理の全てがされなくなります

埼玉県環境科学国際センターの倉田泰人さん(廃棄物工学が専門)のホームページ掲載文章によると

(以下、一部抜粋)

 

【最終処分場の浸出水や放流水は安全なのだろうか】

日本は降雨が多く、最終処分場に埋め立てられた廃棄物に含まれている多くの化学物質は雨水により溶け出してきます。

この水を浸出水と呼んでいますが・・(中略)・・浸出水には多種類の化学物質が含まれており、

現時点で法律により規制されていない化学物質が水処理により除去されずに環境中に放出されたり、

埋立地から地下へ浸出水が漏水した場合には地下環境を汚染する可能性があります。

 

【最終処分場浸出水中に検出される化学物質】

埋立地に埋め立てられた廃棄物には様々な化学物質が含まれています

これら化学物質のうち、水に溶けやすいものは雨水により廃棄物から溶け出し、浸出水に移行します。

今までに一般廃棄物や産業廃棄物の埋立地浸出水に含まれる化学物質について分析した結果が報告されており、

フェノール類、 1,4-ジオキサン、 リン酸トリエステル類、 多環芳香族炭化水素類、 アミン類 のような有機化合物や

ナトリウム、 カリウム、 カルシウム、 塩化イオンの無機成分が高濃度で検出される場合があります。

特に浸出水中に高い頻度で検出され、または高い濃度で検出されることがある化学物質には、

フェノール、 ビスフェノールA、 1,4-ジオキサン等 が挙げられます。

このうち、ビスフェノールAは魚に対する内分泌かく乱作用を持っていると環境省が考えている物質です。

また、1,4-ジオキサンは国際がん研究機関(IARC)がグループ2Bに指定した物質で、ヒトに対して発がん性の疑いがある物質とされています

この物質は日本では飲料水に対する基準値や公共用水域の要監視項目の指針値(いずれも50μg/l)が設定されている物質でもあり、環境を保全する上でも重要な物質とされています。

これら物質が埋立地周辺に影響を与えるのは、水処理施設による除去が技術的に困難であること、

水処理施設が設置されていないことまた埋立地の遮水シートの劣化が原因で起こる漏水

が考えられます。

これら有害性が指摘されている化学物質等について基準が定められていない現状においても周辺環境に有害な濃度レベル以上で排出することがない埋立地を建設することが今後重要になってきます。

 

<引用元:ごみ埋立地のイメージを変えよう(PDF)―安全・安心な埋立地をめざして―廃棄物管理担当 倉田 泰人> 

<上記pdfのリンク掲載ページ:埼玉県 環境科学国際センター

 

 

 

いまだ未解明な部分の多い「環境ホルモン」や重金属類などを多く含む浸出水の扱いは、

慎重な上にも慎重でなければならないと考えます。


それでは、広島市では環境ホルモンについて、どのように考えているのでしょうか。

環境ホルモン 広島市の見解

市民からの意見に対し、市は過去下記のように答えていました。

(チラシNo.32

・・・なんと、環境ホルモンは測定しない、とのことです。

 

そもそも、恵下埋立地には「浸出水処理施設」が設置される計画ですが、

広島市の説明として

「浸出水集排水管により、速やかに浸出水調整池へ導かれ、浸出水処理施設で処理を行った後、

公共下水道へ放流します」とあります。


埋立地から染み出す有害物質を含んだ浸出水は、処理施設できれいな水に処理したのちに、

公共下水道に放流するので心配ない、ということでしょうか。

浸出水処理施設で浸出水はどこまできれいになるのか

広島市が「浸出水処理施設」と言っているのは、

水の中の浮遊物質などを「沈殿」させ「ろ過」して上澄み液を流すための沈殿ろ過施設です。

沈殿ろ過でも物質によっては濃度は下がりますが、有害物質が取り除けるわけではありません

 

11月19日の戸山公民館での説明会では

「浸出水の漏出等に対する不安を払しょくするための更なる安全対策について」として

「簡易処理方式(上記の沈殿ろ過のこと)から高級処理方式への変更を検討すると発表がありました。

 

現在の計画(簡易処理方式)では公共下水道へ放流できる水質まで処理することになっていますが、

導入を検討する高級処理方式では、公共水域へ流すことが可能な水質になる、との説明でした。

公共下水道を流れた汚水は、西区の西部水資源再生センターなどで処理したのちに海へ放流しているが、

それと同じ処理を埋立地内で行う、というものでした。

 

ところが、繰り返しますが、浸出水は普通の下水とは違います

有害物質を含んだ浸出水は、高級処理方式で「浄化」しても、塩分(塩素イオン)が除去できないため、

海には流せるが、塩分濃度が高いため、川へは流せないという説明でした。

結局は漏れてはならない状態の水である、とのことです

高級浄水処理であっても、塩化物を取り除けないレベル、

 つまり前提として取り除けないものがある、ということ。

 環境ホルモンなども前述の説明を見る限り、除去は期待できそうにありません

 


説明会では、

「この写真のように、濁った水がきれいになります」、という解説がありました。

 

透き通ればいい、という見た目の問題ではないのは、ここまで読んでいただけていればおわかりだと思います。。

 


(チラシNo.32

(チラシNo.32