◆ このページのポイント ◆

1.埋立地に関係するほとんどの負担を負うのは、山ひとつ隔てた戸山地区。

2.にもかかわらず、戸山がこのことを知らされたのは市と水内が建設合意を交わしたあと。

3.市はずさんな安全対策への戸山住民の不安の声や要望に対し「計画は決まったこと」と

  取り合わない姿勢。


汚水・工事車両・ごみの搬入・排気ガス…全部戸山へ

恵下(えげ)埋立地は、佐伯区湯来町水内(みのち)で「合意」され計画されているものですが、大きな影響を受けるのは隣のまち。

湯来から埋立地を挟んで山の裏側・安佐南区沼田町戸山は、こちらも太田川の源流の一つ 吉山川が流れる山里で、

昔から地下水を飲み、料理に使い、山から流れてくる沢や川の水を田畑に使って生活して来られました。

 

今でこそ隠れ家的な有名店がいくつもできて、そんな戸山を楽しみに出かける人も増えてきているようですが、

湯来のように観光を目玉としたまちではないため、いい意味でひっそりとして昔ながらの里の風景が残っている場所です。

農業推進地区にも指定されていて、農業を含め自然の恵みを活かしたお店や団体が、里山の風景を残すために活動しているそうです。

 

こんな戸山は、

 

埋立地本体工事着工後の工事車両

完成後のゴミ搬入出車両

●覆土運搬車両

それらによる排気ガス・騒音

散々漏れる可能性があると指摘されている浸出水ポンプ圧送(戸山の一般道の地下に埋められる)

 

これら全ての負担を強いられる計画となっているにもかかわらず

戸山の住民がこの計画を知ったのは水内地区が合意書を交わした後の事後報告でした。

 

戸山の人たちが知ったときには、ほとんどの計画が進められた後で、

同意や協議の土俵にあがるというよりは、計画とその進捗状況の報告会、というかたちの説明会がもたれてきたようです。

 

しかも、それは「地元」向けの説明会ではなかったそうです。それが、

「こんなに負担を押し付けられ、浸出水が集落に漏れ出る大きなリスクを抱えることになりかねないのに地元とも認められないのか」

との戸山地区の強い要求を受け、ようやく

「整備を進めるうえで、戸山地区は重要な位置を占めています」

「整備事業を展開するうえで、避けて通れない地区となっています」

との表現で市から「重要な地区」とされたのは平成26(2014)年頃

 

いまだ「地元」の扱いではないとのことですが、

はじめに恵下(えげ)埋立地の計画が持ち上がったのは平成19(2007)年だったので、

それから7年間「重要な地区」と認められることもなく

「負担は戸山で」という決定事項を知らされることもなく、市との間で協議が行われることもなく

説明会とは名ばかりの事後報告会をされてきたことになります

 

住民から要望があれば説明会を開催するそうですが、要望がなければ開催しないそうです

そもそもの情報が入ってこない状態で、どうやって計画や負担の重さを知ることができるのでしょうか。

積極的に住民に説明しようとしないのはなぜなのでしょう。

 

しかも、説明会が行われるようになってからも、住民の不安の声に耳を傾けることなく

「計画を変える考えはない」「予定にないものは(数値を出したり見積もりを出すなどの実現可能性を)検討しない」

と向き合うことを避けているようです。

 

 

そればかりか、

「今の計画をのんでくれるなら戸山の住民が要求している公共事業の検討の優先順位を上げる」と言ってきているとのこと。

 

これはおそらく、水内が「ごみ処分場とセットで、私たちの長年の悲願であり湯来町の発展に必要不可欠な

広島湯来線(麦谷~戸山)が全線整備されること」を建設了解の大きな要因としていることから(チラシNo.21)、

地元の長年の要望と抱き合わせ、エサのようにして了解を求めるやり方が常態化しているのでしょう。

 

水内では建設了解の際に「外部有識者を含む安全協議会を設置し協議会で協議すること」も条件に挙げていましたが、

外部有識者を含む安全協議会は設置されないままここまで来たそうです。

 

 

こんなにたくさんの負担を強いられ、

それも全国に例がないようなポンプアップを多用する浸出水送水管を通す計画を押し付けられている戸山地区の皆さんにとっては

漏水=飲み水、農業用水の汚染に即つながります。

恵下埋立地の浸出水が戸山を通って排水されることが合意のないままに決まっていたことに住民は心を傷ませており、

この問題が発覚してからは地域一丸となって「戸山に排水を通させない」と示してこられました

しかし市の対応は上に述べた通り…。

 

安全対策、安全のための最新技術の検討・導入が後回し(どころか検討した形跡すらないようですが)にする市の計画を

そのままのめ、というのは、乱暴すぎるし非人道的ではないでしょうか。

他の「地元」では…?

広島市は、地元の水内(みのち)にも、大きな負担を負わせる準地元と言える戸山にも、

住民への積極的な周知・説明・協議をしてきませんでした。

 

ごみの埋立地・最終処分場というのは、どう考えても迷惑施設だから、

やはりどこでも人知れず一部の人たちだけで計画・運営しているものなのでしょうか。

 

いえいえ…、

隣の県、山口県の最終処分場計画では、地元同意過程が新聞に掲載されており、

自治会への丁寧な説明がなされていました。(チラシNo.20

 

山梨県のゴミ処理場で漏水が検知され、閉鎖に至った際も、

安全管理委員会の議事録や会議資料もすべてホームページに掲載されており、

原因把握の過程が明示されていました。(そのほかの不安・全国の事例、チラシNo.25

 

 

恵下埋立地は、広島市民の飲み水になる太田川源流にできるものなので、

これらのような一層の透明性が求められます

沢や川の水を農業に使い、井戸水を煮炊きに使う、穏やかな田園風景の戸山。

正面の山の裏側に恵下埋立地本体が計画されている。

吉山川も太田川の源流のひとつ。


 

 

この件について、戸山の友人(若いパパママ世代)に聞きました。

 

戸山の人の多くは、計画がかなり進んでから知り、白紙撤回してほしいという思いがあるものの、

望んでいた広島湯来線の拡幅工事が始まってから

これが“埋立地に行く工事車両のため”であり、“浸出水送水管を埋める道路にするための工事”であることに気づき

日々毎日道路工事が進み既成事実が積みあがっていく様を悲しみと怒りとあきらめのまじったような気持ちで見ていること。

 

もともと広島湯来線の道路の拡幅は、戸山も水内同様にごみ処理場の計画が持ち上がるよりも前から

市へ要望していた箇所だったそうで、市側から 「ごみ処理場の件とは関係ありません」と説明があったはずだったのに、

先月11月19日の説明会では

「ごみ処理場については建設合意済みである。

 ごみ処分場までの道路の拡幅は約束(事業予定に含まれている、の意)だったから、履行したまで」ととれる回答をされたこと。

 

こんな中で、「玖谷がもうすぐいっぱいになるから」と急かされて、これまで戸山の安全を守るために

市に意見や代替案、不安や疑問をたくさんぶつけてきた年配の方々に疲労が見えて、

これからは若者が頑張っていこうとしているようです。

戸山から麦谷に向かう広島湯来線、

拡幅工事の始点。

新しい広島湯来線は、トンネルをつくって埋立地に出入りする車両と浸出水送水管を通す計画。事業の進め方に納得のいかない地主さんが用地買収に応じていないので、市が強制収用をちらつかせているとのこと。

工事の概要を知らせる看板。

(右)

広島湯来線から埋立地に入るために造られている取付道路の入り口付近。広島湯来線の整備は水内地区の悲願だったとのことだが、不思議なことにここから下(水内方面)は土地の買収が進んでおらず工事が全くされていないそう。