◆ このページのポイント ◆

1.浸出水を一時的に溜めておく浸出水貯留池の容量が、近年の豪雨化に対応していない。

2.容量が足りない今の計画のまま進むと、有毒物質を含む浸出水そのままがあふれて

  近隣地域や太田川の水に流れ込む。

3.川の氾濫を防ぐための防災調整池も容量が足りない。

4.市の認識が甘く、専門家や市民の指摘や要求に対応する姿勢がない。


ゲリラ豪雨に耐えられる?

耐えてもらわなくては困ります。

(チラシNo.31

2014年、8月20日に発生したゲリラ豪雨と土砂災害によって、広島にも甚大な被害が出たことは記憶に新しいと思います。

上の写真は、その時に被災した玖谷(くだに)埋立地です。

被害の大きかった八木・可部から少し奥まったところに位置する玖谷埋立地(安佐北区安佐町筒瀬)でも土砂崩れが起こり、

排水管には土砂やがれきが詰まり、排水不能になっていました。

 

恵下(えげ)埋立地の設計では、この規模の降水があった場合に、土砂災害を防げないこと、

埋立地周辺に降った雨水を一時溜めておく「防災調整池」や

埋立地から染み出してきた浸出水を溜めておく「浸出水調整池」がそれぞれ小さく、水が溢れでてしまうことが判明しています

二つの「調整池」 それぞれの役割

 

「浸出水調整池」は、

雨水などが、埋立てた廃棄物の間を流れてくるときに有害物質を溶かすので、それを含んだ水を一時貯留する池です。なぜ「調整池」かというと、埋立地から出てくる量は雨の降り方によって変わってきますが、ポンプで送水する量はポンプの能力によって決まっているので、ポンプが負ける量(ポンプで排水しきれないもの)を一時貯留して時間差で送水する「調整」をする池だからです。


「防災調整池」とは、

降雨時の安全性を保つための池です。山肌を開発し、舗装などをすると、それまでは地中に浸み込んでいた雨水が浸み込まずそのまま流出するようになるため、川に直接流れ込む水量が増えることになります。そのままでは、川が氾濫する恐れがあるため、一時池に貯めることによって、一気に川に流れ込むことを防ぎ、時間遅れで流すよう「調整」する池です。

  


名前が似ていますが、この二つの池の目的は全く異なるものです。

(図は「恵下埋立計画環境影響評価書 要約書その1」の図に下線を施したもの)

 

“浸出水”調整池の大きさ 市の計画のままで大丈夫?

埋立地に降った雨は、一部は蒸発し、

また埋立が終わって覆土した区画では、一部は表面を流れて区域外に出ますが、残りは埋立地内に浸透して、

それらは埋立地の底にあらかじめ埋設する浸出水集排水管を通って浸出水調整池に集まります。


(2015年11月19日 住民説明会@戸山公民館 配布資料より)

降った雨に対して浸出する割合を「浸出係数」といって、

地域別月別に定められています。

この割合は、埋立中の区画と埋立が終わって覆土した区画では異なります。

恵下埋立地では過去の6月の雨(梅雨の時期の雨量)で

大きさが決まっています。

 

6月の広島の「浸出係数」は、設計指針(※)によれば、

埋立中区画が0.74(74%)、埋立済み区画が0.44(44%)です。

最も浸出水が多くなり大きな浸出水調整池が必要となるのは

埋立第2期後期の埋立中であるため(埋立は第1期・第2期があります)、                                

浸出水調整池の大きさはその条件で計算されています。

 

(※)公益社団法人全国都市清掃会議発行「廃棄物最終処分場整備の計画・設計・管理要領」  (チラシNo.8

 

 

「設計指針に沿った標準的な設計」をした場合の結果は下図の通りです。(試算の根拠はこちら

(チラシNo.8

上記のように、市の設計(21,757㎥)は指針に沿った標準的な設計よりも著しく小さなものとなっています。

どうしてこんなに池を小さくしているかというと、

埋立済みの区画にキャッピング(遮水性または難透水性のある覆い)をし、その効果に期待しているから、とのことです。


しかし、キャッピングが平坦部のみで計画されているのも問題ですが、

そもそも浸出水調整池の大きさが標準的な設計の半分強しかない、、ということが実態です。

雨が埋立地にしみこむ量を降った雨のうち10%、と見込んでいますが、設計指針に沿えば本来は44%。

キャッピングのない斜面部も10%と見込まれているうえに、驚くことにその根拠がないのです

 

また、「過去30年間の観測雨量から最大のもので算定しているので大丈夫」と一貫して市は説明してきましたが、

近年の報道や体感から雨の降り方は明らかに変化してきています。

恵下埋立地環境影響評価審査会の委員も広島市長も、

現行の技術基準にとらわれず検討すべき(=池を大きくすべき)との意見で一致しています

(チラシNo.8

もちろん、小さい池のままで豪雨が降ると浸出水があふれてきてしまう周辺地域の住民からも要望がでています。


安全や安心を考えると費用は二の次のはずです。

池を大きくしても、コンクリートや鉄筋の使用量が増えるだけです。

設置場所を変えるだけで解決できるのに…

“考える会”は、浸出水調整池を現計画より高い位置にすれば容易に容量を大きくでき

また、直下に浸出水処理施設を配置できると代案を示しています。

(チラシNo.9


→こちらもお伝えせねばなりません。。

現計画では、

浸出水処理施設は浸出水調整池より別の高い位置にあり、浸出水を処理するために40mのポンプアップが必要です。(ポンプアップの危険性については、

“前代未聞のポンプアップ”ページをご覧ください。)

 

調整池から配管の中をポンプ圧送される水は、

処理前の、危険性の高い浸出水原水です。

もし、斜面が崩れて配管が破断した時の影響は……???

通常、浸出水処理施設は池のすぐ隣に配置するものです。わざわざ離れた高台に設置しているのも理解しがたいです。

 (チラシNo.32

 


しかしこのような意見、容易に見える解決策もあるのに、市はこの池の容量や設置場所を全く改善していません。

豪雨化する時代に…これでいいの!?

日本気象協会が「総雨量2000mmの時代に入った」と発表するほど、

雨の降り方は年々豪雨化してきています。

 

また、環境影響評価審査会では吉國副会長が以下のように述べています。(チラシNo.30

事業予定地は大雨の多発地帯であり、豪雨で土石流災害が発生している地域であることから、

 防災面について、十分検討してほしい。

 事業予定地の南側斜面について防災面の対策が検討されていないが、

 この部分は花崗岩(かこうがん)質で崩れやすいため

 斜面が緩やかであっても安心できない。より高いところから、広範囲に防災対策について検討を行う必要がある。」

 

平成22(2010)年12月20日の環境影響評価審査会では、このような検討要請がやりとりされました。

今まで広島市は 1時間に100mm以上にもなる豪雨は広島市では起こらないので想定する必要がない、という態度でした。

しかし、ご存じのとおり2014年の広島8.20では、その予想をはるかに超える大雨が発生しました。

2時間以上豪雨が続いたこともあり、非常にもろく崩れやすい風化花崗岩だけでなく、

堅いと言われている流紋岩や堆積岩の層ですら破壊しました。

広島に限らず、また近隣においても、過去30年になかった豪雨が頻繁に発生し、大規模な土砂災害を引き起こしています。

>>内閣府 防災情報のページ 災害情報一覧

“防災”調整池の大きさは足りてるの??

「池」には、浸出水調整池のほかにもうひとつありました。

「防災調整池」です。

埋立地周辺に降った雨水を一時的に貯留し、一気に河川に流れ込むのを防ぐ防災調整池の大きさは

市の設計で足りているのでしょうか??

 

下の図は、市が計画している防災調整池の容量45,000㎥と

2014年8.20の安佐北区可部上原の降水データを重ね合わせたものです。

貯水能力が明らかに不足していることがわかります。

(チラシNo.30

2013年7月と8月に山口県・島根県で発生した豪雨は、2014年広島の8.20よりはるかに大きい降水量でした。

島根県の津和野や江津市桜江は、山の中で、恵下と立地条件がよく似ています。

当時の気象庁の観測所の降雨データを用いて、防災調整池が機能するかをシミュレートした図が下です。

結果、やはり池の大きさが足りません。

今後の降水量の予想は難しいものですが、

ここ2、3年の降雨データを見るだけでも防災調整池は70,000㎥ほどの大きさが必要です。

(チラシNo.30裏

がっかり…市の認識、甘くない!?

そもそもの根本的な意識として、広島市の認識が甘いことが、環境影響評価審査会の議事録から読み取れます。

(平成22(2010)年12月20日 広島市ホームページ掲載議事録より)

(チラシNo.30

※最下部に“左図”とあるのは前述の 8.20降水量と防災調整池の容量を重ね合わせた図を指します。  

このほか、豪雨対策や土砂災害対策として他に疑問・不安な要素として、


急斜面の設計でありながら、8.20で被災した玖谷埋立地よりも砂防ダムが少ない(チラシNo.31

 

浸出水調整池の下や周囲にも遮水シートなど漏水対策が必要なのではないか

※宮崎のエコクリーンプラザみやざきは浸出水調整池が地盤沈下によって破損、

 クラックから漏水が発生して大部分が長期使用不可能になったそうです。(チラシNo.40

 

道路が崩壊した場合、浸出水の送水管も崩壊して浸出水が太田川の源流に流れ出す

広島湯来線と埋立地本体を結ぶために建設される取付道路のうち、谷を横断する部分(渓流横過部)は

最も経費のかからない「排水管を通して谷を埋め、道路をつくる」(谷埋め盛土)方式となっています。

道路盛土の被災事例で最も多いのが渓流横過部で、渓流に土石流(土砂流)が起きた場合に

排水溝の呑み口部が閉塞されてオーバーフローしたり土石流の衝撃で盛土ごと流出されることが最も多いそうです。

道路下に埋められた処理水の送水管も、予備を含む2本ごと一緒に被災して、

浸出水(処理済みのもの)が不明谷(あけずたに)川に大量に流出し、

太田川の源流の一つ・水内(みのち)川に流れ込みます。(チラシNo.37

(チラシNo.37

(チラシNo.37

(チラシNo.37


 

などがあります。

施設の設置後に想定した降雨強度を超える事態が発生すれば、浸出水の流出は当然起こりえます


処理後の浸出水かもしれないし、処理前の浸出水原水かもしれません。

が、次の「処理水・汚水ってなに」の各項目にまとめたように、処理したものであっても有害物質は取り除けず、

浸出水の流出は、万が一にもあってはなりません。

市が「一滴も漏らさない」という覚悟が本当ならば、対策を行う上で、念には念を入れるべきです。


これらの状態が放置されたまま、工事着工を絶対に急いでほしくありません!!!